AGA

フィナステリドの抜け毛への効果と注意すべき副作用

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

男性型脱毛症(AGA)への効果的な治療薬として昨今注目を集めているフィナステリド。

名前はよく耳にするものの、「他の抜け毛治療薬と何が違うの?」という点では???な方も多いのではないでしょうか?

ここではそもそも男性型脱毛症がなぜ発症するのかのメカニズムと、フィナステリドで抜け毛対策ができる理由や他の治療薬との違いについて徹底的に解説します。

目次

1.最近、抜け毛が気になる…男性型脱毛症(AGA)って?

多くの中高年男性を悩ます抜け毛や薄毛。

特に男性型脱毛症(AGA)と呼ばれる病名は、育毛剤の宣伝や各種メディア等で耳にされたことがある方も多いのではないでしょうか?

「ストレスが原因では?」「遺伝だから諦めるしかない…」など、ウェブ上ではさまざまな情報が溢れていますが、近年、男性型脱毛症の発症や抜け毛のメカニズムについては科学的なアプローチによりその詳細が明らかになりつつあります。

私たちの髪の毛一本一本には毛周期と呼ばれるサイクルが存在し、数年かけて発毛と脱毛を繰り返しています。

つまり脱毛症ではない正常な人でも抜け毛は普段から起きていて、抜け落ちる髪の毛の量と新たに生えてくる髪の量のバランスが取れているため、全体としての髪の毛の量がほぼ一定に維持されているのです。

毛周期には、髪の毛が伸長する成長期と、伸長が停止し髪の毛の根元にある毛包組織が退縮していく退行期、毛根が完全に退化した状態となる停止期の3つの期間があるのですが、正常時に比べて成長期が短くなったり、停止期にある髪の毛の割合が増えていくと、いわゆる薄毛・抜け毛といった症状が観察されることになるます。

男性型脱毛症の原因がまさにこの毛周期の乱れにあることが近年明らかになってきました。

1-1.男性型脱毛症の原因は毛周期の乱れ?

男性型脱毛症の特徴としては前頭部や頭頂部を中心とした薄毛や抜け毛が挙げられますが、男性型脱毛症の患者の毛周期を詳細に観察したところ、前頭部や頭頂部の髪の毛の一部で成長期が極端に短くなっていることが分かりました。

逆に毛包・毛乳頭など毛根部分で発毛を担う組織が退化・退縮していく退行期や休止期にとどまる髪の毛の量が、想定的に増加していることも明らかになったのです。

現在では、このような毛周期の乱れが前頭部や頭頂部の髪の毛を中心に発生、短かったり細い髪の毛の量が増え、最終的に額の生え際が後退するなど、薄毛の症状につながっていくことが男性型脱毛症の原因であると考えられています。

1-2.男性型脱毛症になるのは何歳くらいから?

男性型脱毛症の症状が顕著になるのは、日本人の場合、20代後半から30代にかけてと言われており、その後症状が徐々に進行して 40歳代になると前頭部や頭頂部が脱毛した状態になるというのが典型的なパターンと考えられています。

また、日本人男性における男性型脱毛症の発症は平均で約30%との報告があり、発症割合は年齢とともに高くなることが分かっています。

1-3.そもそも毛周期の乱れはなぜ起きる?

近年になって明らかになってきたこととして、男性型脱毛症の発症にかかわる毛周期の乱れに、男性ホルモンが関与していることが挙げられます。

一般的に、男性ホルモンは筋肉を発達させたり、髭や胸毛などの発毛を促進する働きを担っているのですが、前頭部や頭頂部に作用すると逆に髪の毛を退化させ抜け毛を促進する場合があるのです。

これは男性ホルモンの1つであるテストステロンが、前頭部や頭頂部の毛乳頭細胞に存在する2型 5α-リダクターゼという還元酵素の働きを受けてジヒドロテストステロンと呼ばれる物質に変換されてしまい、このジヒドロテストステロンが毛包・毛乳頭部分の組織に悪影響を及ぼしているためであることが明らかになってきました。

「ハゲは遺伝なのでは?」と思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、この遺伝的な薄毛や抜け毛も、実はテストステロン・ジヒドロテストステロンのような男性ホルモンやその受容体に関連する異常によって引き起こされている可能性があるとも考えられ、遺伝にせよ、ストレスにせよ、その原因がジヒドロテストステロンの過剰生産、それによる毛周期の乱れ、髪の毛の成長の阻害にあると考えられるようになってきました。

2.前頭部や頭頂部の髪の毛の成長を邪魔する男性ホルモン「ジヒドロテストステロン」

2型 5α-リダクターゼと呼ばれる酵素の働きによって、テストステロンから変換・産生されるジヒドロテストステロンもまた男性ホルモン物質の1つで、男女にかかわらず私たちの身体内に普段から少なからず存在する物質です。

脱毛症に悩まれる方にとっては有害な物質と思われがちですが、特に男性においては欠かすことができないホルモン物質であり、例えば男性の胎児の時にジヒドロテストステロンが極端に不足すると性器の正常な分化が阻害されてしまう可能性もあります。

成人以降は髭や胸毛の伸長に寄与するほか、前立せん肥大やニキビなどの発症にも関与していることが分かってきています。

このジヒドロテストステロンが前頭部や頭頂部で抜け毛を引き起こす際、髪の毛の毛根部分にあたる毛包組織にある毛乳頭細胞に男性ホルモンが多く取り込まれて作用することが分かっています。

これは毛乳頭細胞に男性ホルモンを取り込むための受容体(レセプター)が存在するためで、また毛乳頭細胞にテストステロンが取り込まれた後、毛乳頭細胞内にある5α-リダクターゼの作用を受けて、ジヒドロテストステロンに変換されているのです。

このジヒドロテストステロンは毛乳頭細胞が担う髪の毛の発毛にかかわる働きを変化させてしまいます。

髭や髪の毛など私たちの体毛は、毛母細胞と呼ばれる毛の素となる細胞が毛乳頭細胞からの指令を受けて分裂・増殖を繰り返すことで伸長するのですが、髭の毛乳頭細胞ではジヒドロテストステロンの働きによってIGF-1と呼ばれる成長因子の分泌が促進され、毛母細胞の増殖を活性化させる現象が起きます。

一方、前頭部や頭頂部にある毛乳頭細胞からは、ジヒドロテストステロンの作用によってTGF-βと呼ばれる抑制因子が分泌されてしまい、毛母細胞の分裂・増殖が阻害され、髪の毛の成長期にある毛包であっても毛の伸長が妨げられてしまうのです。

このように、部位によって男性ホルモンと毛乳頭細胞によって引き起こされる作用が異なるのですが、前頭部や頭頂部を中心とした薄毛・抜け毛は、毛乳頭細胞に蓄積するジヒドロテストステロンが髪の毛の伸長を抑制する因子の分泌を促すことが原因であることが明らかになってきたのです。

3.男性型脱毛症(AGA)と同様に男性ホルモンが原因とされる脱毛症は他にも…

ジヒドロテストステロンのような男性ホルモンを原因として発症する脱毛症は男性だけに起きるものではありません。

女性男性型脱毛症(FAGA)と呼ばれる脱毛症は、AGAと同様、男性ホルモンの過剰産生が原因となって発症すると脱毛症と考えられ、女性でも発症する脱毛症として知られています。

男性型脱毛症とは異なり、前頭部・頭頂部に限らず頭部の比較的広い範囲で薄毛や抜け毛が生じるというのが女性男性脱毛症の特徴ですが、そのメカニズムは髪の毛の成長期が短くなり、逆に休止期の髪の毛の割合が増加するという点で男性型脱毛症と同様です。

この女性男性型脱毛症における毛周期の乱れも男性ホルモン物質の作用によって引き起こされていると考えられています。

通常、男性だけでなく女性にも少なからず存在している男性ホルモンですが、普段は女性ホルモンの働きで男性ホルモンの作用は抑制されています。

ところが、何らかのきっかけで女性ホルモンが減少したり、結果として男性ホルモンが増殖してしまうと、ジヒドロテストステロンの産生量が増加し、毛周期の乱れを引き起こして脱毛が生じてしまうようです。

このようなホルモンバランスによって、女性でも脱毛症が引き起こされるのです。

3-1.ホルモンバランスが乱れる原因として考えられること

女性ホルモンが減少したり、その結果男性ホルモンが増加するような、ホルモンバランスが乱れる要因として代表的なものがいくつか挙げられます。

1つは加齢・老化。通常、脳からの指令を受けて卵巣で分泌される女性ホルモンですが、加齢とともにその分泌量が低下していくことが知られています。

特に40代に入り、更年期と呼ばれる期間に入ると女性ホルモンの産生量は急激に減少、閉経後はほとんど女性ホルモンが分泌されなくなります。

加齢・老化とともに女性でも薄毛・抜け毛が増えるのには、こうした女性ホルモンの減少が1つの要因と考えられるのです。

また、ストレスや過度なダイエットも女性ホルモンの分泌量を低下させる可能性があると考えられます。

これは、ストレスや過度なダイエットにより自律神経が乱れ、特に休息・リラックス時に作用する副交感神経が働きにくくなることにより、女性ホルモンの分泌が減少するためと考えられます。また過度なダイエットによって、髪の毛の伸長に必要な栄養分の補給が減少することも考えられ、そのような栄養不足も薄毛・抜け毛の要因となり得ます。

4.フィナステリドはなぜ抜け毛対策に有効なのか?

男性型脱毛症の治療薬、薄毛・抜け毛対策の薬剤として注目を集めているフィナステリド。

フィナステリドとは、別名「N-tert-ブチル-3-オキソ-4-アザ-5α-アンドロスタ-1-エン-17β-カルボキサミド」という長い名前の化合物であり、白色で結晶性の粉末状の物質です。

このフィナステリドを成分として含む製品「プロペシア」は米国の医薬品メーカーにより開発された内服薬で、薄毛・抜け毛治療のための医薬品として世界各国へ流通しています。

日本では2005年に承認、発売が開始され、服用にあたっては医師の処方が必要となる処方薬ですが、男性型脱毛症に対する有効性が認められた「飲む育毛剤」として注目を集めています。

このフィナステリドがなぜ男性型脱毛症の抜け毛対策に有効かと言うと、フィナステリドには2型5α-リアクターゼの働きのみを選択的に抑制する作用があり、これによりテストステロンからジヒドロステロンへの変換を阻害、髪の毛の成長期を伸ばすことで、抜け毛を防止したり、脱毛の進行を遅らせる作用があるからなのです。

4‐1.フィナステリドはもともと前立腺肥大症の治療薬だった

もともと、フィナステリドは脱毛症の治療薬としてではなく、前立腺肥大症の治療薬として生まれました。

フィナステリドを高用量(5mg/日)で服用することで前立腺肥大症や前立腺がんを抑制する効果が発見され、「プロスカー」という商品名で前立腺肥大症の治療薬として海外で販売が開始されたのが始まりです。

前立腺とは男性のみが持ち、精液の産生にかかわる、膀胱近くに存在する比較的小さな臓器なのですが、これが肥大化するのが前立腺肥大症と呼ばれる疾患で、頻尿や排尿遅延、残尿感などの症状を引き起こすことが知られています。

フィナステリドは、この前立腺肥大症に対する治療薬として海外では有効性が確認されていますが、日本ではその有効性が十分に確認されず、承認されていません。

ところが、このフィナステリドを低用量(0.2または1mg/日)で服用したところ、男性型脱毛症の症状を抑制する効果が見られたことから、脱毛症治療薬としてのフィナステリドが注目されるようになったのです。

4-2.フィナステリドの有効性は、男性型脱毛症のモデル動物・ベニガオザルの実験で明らかに

ベニガオザル(紅顔猿)とは主に東南アジアを中心として生息しているオナガザル科の霊長類で、人間と同様、加齢とともに前頭部で薄毛・抜け毛が生じることで知られており、またその脱毛の要因が男性型脱毛症と同様、男性ホルモンの影響によって引き起こされることから、男性型脱毛症のモデル動物として知られています。

ベニガオザルは4歳ごろから思春期を迎え、その頃から血中の男性ホルモン濃度が増加、同時期に毛周期の成長期が短かくなり、前頭部で退行期・停止期の毛髪が増加するのです。

このベニガオザルに半年間に渡ってフィナステリドを経口投与し続けたところ、抜け毛が減少して毛髪が増加、毛周期における成長期の毛包が増加していることが分かりました。

ジヒドロテストステロンの減少もあわせて観察されたことから、フィナステリドは有効な抜け毛治療薬であることが、モデル動物を用いた実験からも示唆されたのです。

4-3.日本国内での臨床試験では98%で薄毛・抜け毛の進行を抑制!

国内で行われたフィナステリドの臨床試験では、1年間毎日投与する試験によって、髪の毛の本数や毛髪重量で明らかな改善が観察されました。

この臨床試験は二重盲検比較試験という、医師・患者の双方ともに本当の薬を投与しているのか分からない状態で行われ、男性型脱毛症を発症している患者に対してフィナステリドを毎日1mg投与する群と、フィナステリドを毎日0.2mg投与する群、プラセボ(偽薬)を投与する群の3つのグループに分けて、頭髪の状態の変化を写真で確認したり、被験者の自己評価を確認するといった内容でした。

二重盲検比較試験はプラセボ効果を回避できる信頼性の高い試験手法なのですが、この試験を1年間継続した結果、フィナステリドの投与によって脱毛症状の軽度改善以上の効果が見られた対象が58%、改善までは行かなくとも98%の対象で薄毛・抜け毛の進行が抑えられたという結果が得られたのです。

またその後もフィナステリドの服用を継続することで、軽度改善の効果は2年後で68%、3年後で78%と使用を継続するほどに上昇していくことが明らかになりました。

この試験結果から、フィナステリドの継続的な服用が薄毛や抜け毛の改善・防止に有効であることが証明されたのです。

こうした臨床試験の結果を踏まえ、日本皮膚科学会が策定した「男性型脱毛症診療ガイドライン(2010 年版)」では男性型脱毛症治療の推奨薬の1つとしてフィナステリドを定めています。

4-4.フィナステリドはすべての脱毛症に有効な訳ではない

フィナステリドは薄毛・抜け毛の治療薬として注目を集めていますが、あくまで男性ホルモンを原因とした脱毛症でのみ有効であるということに注意が必要です。

フィナステリドは2型5α-リダクターゼの阻害剤なので、ジヒドロテストステロンの産生を抑制することによる抜け毛防止・発毛促進の効果はあるものの、円形脱毛症などジヒドロテストステロンの増加が直接の原因ではない脱毛症には効果を発揮しません。

また女性の抜け毛対策においても、更年期以後に男性型脱毛症を発症した女性にフィナステリドを投与しても有効な効果が確認されなかったことから、フィナステリドは女性に対して効果を十分に発揮しないものと考えられています。

特に妊婦に投与すると、フィナステリドが引き起こすジヒドロテストステロン産生量の低下により、男子胎児の生殖器が正常に発育・分化できなくなる恐れもあり、妊婦を含め原則として女性の脱毛治療にフィナステリドが用いられることはありません。

4-5.フィナステリドには副作用も…

医薬品につきものなのが副作用。

フィナステリドにもいくつかの副作用が報告されています。日本国内で行われた臨床試験では、1年間のフィナステリドの服用で勃起機能不全や射精障害、精液量減少などの性機能に関連する症状が観察されています。

ただし、プラセボ(偽薬)を投与した群と症状の発生確率に有意な差が見られず、フィナステリドによる直接的な副作用かは明らかになっていません。

また、フィナステリドの重篤な副作用として挙げられているのが肝機能障害です。

頻度は不明で、出現確率はあまり高くないと考えられていますが、問題が生じた場合はフィナステリドの投与を中止するなどの適切な処置が必要となる副作用のため、フィナステリドの処方・投与にあたっては医師の判断が必要とされているのです。

5.フィナステリド以外の抜け毛治療薬は?フィナステリドとの違いは?

フィナステリド以外にも男性型脱毛症に有効な治療薬はある一方、育毛剤として流通している製品の中には、抜け毛抑制効果について十分な実証が得られていないものもあります。

各種治療薬や育毛剤の使用にあたっては、なぜそれが効果を発揮するのかのメカニズムを把握したり、使用する薬剤・育毛剤の効能が科学的にどの程度検証されているのか確認することが重要です。

特に男性型脱毛症による薄毛や抜け毛の治療・対策では、ジヒドロテストステロンの産生を抑制したり、結果として毛髪の成長期を伸ばすことが必要なため、その点に作用する医薬品でなければ期待する効果が得られないことも考えられます。

5-1.フィナステリド以外の治療薬①ミノキシジル

1970年代後半にアメリカで経口血圧降下薬として使用されていた薬剤であるミノキシジル。副作用として全身での発毛、多毛症が多数報告されたことから、何らかの発毛作用を持つ薬剤と考えられました。

その後、ミノキシジルを頭皮に直接塗布する外用発毛促進薬として利用するための臨床試験が実施され、1年以上の長期投与で有意に発毛を促進する結果が得られたのです。

重篤な副作用も示さなかったことから、その脱毛症の治療薬としての有効性が認められました。

ミノキシジルには毛細血管を拡張させ、頭皮の血行を促進するとともに、毛母細胞の増殖を活性化する働きがあり、結果として毛周期のうちの成長期を伸ばしたり、停止期から成長期への移行を促進する効果があると考えられています。

フィナステリドとは異なり、ジヒドロステロンの産生抑制には直接関与しませんが、発毛効果が実証されている薬剤として日本皮膚科学会策定の「男性型脱毛症診療ガイドライン(2010 年版)」でも男性型脱毛症治療での使用が推奨されています。

実際の使用にあたっては最低6カ月間、継続的に使用することで脱毛の進行を抑制する効果を発揮するとされており、またフィナステリドとの併用も可能で、併用することによって単独使用よりも高い効果が得られる場合もあると考えられています。

女性男性型脱毛症(FAGA)にもミノキシジルは有効とされていますが、妊婦への投与や授乳中の使用は避けるべきとされています。

5-2.フィナステリド以外の治療薬②デュタステリド

デュタステリドはフィナステリドと同様、5α-リダクターゼの阻害剤であり、ジヒドロテストステロンの産生を抑える効果のある薬剤です。

フィナステリドとの違いは、フィナステリドが2型 5α-リダクターゼに対して選択的に作用するのに対し、デュタステリドは1型5α-リダクターゼをも阻害する作用を持つことが知られています。

2型 5α-リダクターゼは男性型脱毛症の発症部位でもある前頭部や頭頂部の毛乳頭細胞に多く存在するのに対し、1型5α-リダクターゼは全身の毛乳頭細胞に存在しています。

前頭部や頭頂部以外で脱毛が発生している場合で、その原因がジヒドロテストステロンの過剰産生であると疑われる場合は、この1型5α-リダクターゼの作用によるテストステロンからジヒドロテストステロンへの変換が原因とも考えられ、このようなケースではフィナステリドよりも、デュタステリドを治療薬として用いた方が脱毛症状を抑制する効果が得られる可能性があります。

またデュタステリドは、フィナステリドよりも2型5α-リダクターゼに対して約3倍強い阻害効果を持つとされており、より脱毛抑制効果を発揮する可能性もあります。日本では2015年に脱毛症治療薬として承認され、2016年から「ザガーロ」という商品名で発売が開始されており、フィナステリドで十分な効果が得られない男性型脱毛症患者向けの処方が想定されています。

5-3.フィナステリド以外の治療薬③その他の薬剤

フィナステリドやミノキシジル、また近年に認可・発売が開始されたデュタステリド以外にも数多くの脱毛症治療薬や育毛剤が流通していますが、臨床試験の規模が不十分であったり、明らかな有効性が確認されていないなど、統計的かつ科学的にその有効性を十分に実証できていないものもあります。

例えば、「フロジン外用液5%」という脱毛症治療薬に含まれる塩化カルプロニウムは、血管拡張作用があり、円形脱毛症をはじめ各種脱毛症における脱毛防止・発毛促進効果があるとして認可されていますが、臨床試験における対象症例数が少なくまた試験対象が全て男性ということもあり、統計的には十分な発毛効果が実証されていないとも考えられています。

また、育毛剤の一部に配合されているt-フラバノンという物質も、半年間の塗布によって毛髪が太くなる効果が認められたり、抜け毛防止効果が観察されていますが、いずれも臨床試験の対象数が少なく、統計的には実証が不十分とも言える状態です。

もちろんいずれの薬剤・物質も臨床試験の統計的評価以外の点では、その有益性や重篤な副作用が見られない点などは明らかで、「男性型脱毛症診療ガイドライン(2010 年版)」でも推奨度は低いものの脱毛症治療に使用可能なものとして例示されています。

6.フィナステリドによる治療が必要となる前に…普段からできる髪の毛のケア

男性型脱毛症を発症、重度な症状に至ってしまってはフィナステリドなどの医薬品による治療が必要になると考えられますが、症状が深刻になる前に、日々の生活の中で工夫できることもあります。

男性型脱毛症の原因が、テストステロンやジヒドロテストステロンといった男性ホルモン物質の過剰生産にあると考えられることから、逆に言えば男性ホルモンの増加そのものを防いだり、女性ホルモンを増やすことで男性ホルモンの働きを抑制できれば、脱毛症のケアにもつながると考えられます。

6-1.男性ホルモンを抑えるケア①食事内容の見直し

髪の毛の成長において、毎日の食事内容はとても重要。髪の毛の伸長に必要な栄養が食事を通じて供給されなければ、健康な毛根・毛包組織があっても十分に髪の毛が伸長できない可能性があります。

大切なのは栄養素のバランスが良い食事を心がけることですが、脱毛症の原因となる男性ホルモンの増加を防いだり、ホルモンバランスを良い状態に保つための工夫も食事次第でできるのです。男性ホルモンの過剰な働きを防ぐための方法として考えられるのが、女性ホルモン様の作用を持った食品を積極的に摂取するという考え方。

食事として摂取することで女性ホルモンと同様の物質を体内に増やすことができる食品としての代表格が大豆。

大豆に含まれるイソフラボンは、女性ホルモンの1種であるエストロゲンと同じような作用をする物質として知られており、納豆や豆腐を始めとする大豆製品を毎日の食事で積極的に取り入れることで、女性ホルモンの働きを活性化させる効果を期待できます。

ほかにも、女性ホルモンそのものの分泌を促すビタミンB6を豊富に含む、鮪や鰹などの魚類全般、レバー、にんにくなども、結果的に男性ホルモンの働きを抑えることができる、脱毛症のケアに有用な食品と考えられます。

6-2.男性ホルモンを抑えるケア②禁煙と飲み過ぎ防止

喫煙を通じて体内に侵入するニコチンは、血管の収縮や血行不良を引き起こし、頭皮の毛細血管を通じた毛髪に必要な栄養素の吸収を阻害する可能性があるばかりか、喫煙そのものが男性ホルモンを増加させ、脱毛症の発症を促す可能性があるとも考えられています。

これは、米国ハーバード大学による疫学調査の結果から明らかにされたもので、喫煙者と非喫煙者で男性ホルモンの量を比較したところ、テストステロンやジヒドステロンなど男性型脱毛症の原因と考えられる男性ホルモンが喫煙者で有意に多かったという結果によるものです。

この調査結果から、喫煙には男性型脱毛症の発症を促進するリスクがあることが示唆されています。

また、アルコールの飲み過ぎを避けることもまた男性ホルモンを抑え、脱毛症の発症を防ぐためのケアの1つと考えられます。

これはアルコールの過剰摂取にも血管収縮作用やそれによる毛髪の伸長阻害作用があるためで、また肝臓でのアルコール分解能力を超えると、アセトアルデヒドという物質が体内で大量に生成してしまい、血流を介して全身に運ばれることが知られています。

アセトアルデヒドにはテストステロンからジヒドロテストステロンへの変換を促進する作用があるため、アルコールの飲み過ぎも男性型脱毛症の発症リスクを高める可能性があるのです。

まとめ

男性型脱毛症に対する有効な治療薬として注目されているフィナステリドが、なぜ抜け毛対策に有効なのか、その理由やメカニズムについてご理解いただけたでしょうか?

そもそも抜け毛が生じる原因や理由を正しく把握して、有効な対策・治療を選択できるようになりたいですよね。

もちろん、普段からの髪の毛に対するケアや、男性ホルモンと女性ホルモンのバランスを良い状態に保つ工夫もお忘れなく!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る